勇壮に山車競演 おいらせ秋祭り合同運行
2地域の祭りの魅力を同時に体感
8月の八戸三社大祭から始まる、青森県南地域の山車祭り。その締めくくりとなるのが、おいらせ町で開催される「おいらせ秋祭り山車合同夜間運行」だ。
同町で9月に催される「おいらせ百石まつり」と、「おいらせ下田まつり」の山車が一堂に会するイベント。旧百石、旧下田両町が合併し、おいらせ町が発足した2年後の2008年から、地域活性化を図る狙いで行われている。
約140年の歴史を誇り、豊作や豊漁を祈願する百石まつりと、仮装した人が山車の上で「生き人形」を演じるのが珍しい下田まつりの両方の魅力を、同時に体感できるのがぜいたくだ。子どもたちや地域の団体による踊りとダンスも披露され、にぎわいを見せる。今年は県内外から6500人が来場した。
復活を遂げた木ノ下神楽
イベント当日、会場のイオンモール下田に足を運ぶと、店内の西コートで午後3時にオープニングセレモニーが始まった。保育園児による踊りやダンスが続き、和やかなムードに。その後にオヤジバンド「おいらせHot Heart Club Band」が登場すると、雰囲気は一転。迫力あるジャズ演奏で盛り上がった。
さらに、木ノ下町内会による勇壮な「木ノ下神楽」も披露された。この神楽は11年に、町内会がおよそ半世紀ぶりに復活させたものだという。獅子舞に見入っていると、「カッカッ」と音を立てながら近づいてきて、頭をかまれた。邪気が払われればいいが…。怖がって泣く子どももいたが、周りの観客はほほ笑ましく見守っていた。
個性的な生き人形と華やかな山車
オープニングセレモニーが終わると、観客が北側駐車場に移動し、外がにぎやかになってきた。いよいよ、メインの合同運行が始まるのだ。
スタート時の午後4時45分、薄暗くなった北側駐車場には、ライトアップされた山車が勢ぞろいした。今年は百石地区の上新町山車組の1台と、下田地区の山車組の4台、さらに錦ヶ丘保育園の1台の計6台が参加した。
先陣を切ったのは、町文化協会と連合婦人会の流し踊り。「おいらせ音頭」をにこやかな表情で踊った。たくさんの踊り手が練り歩く光景を見ながら、これだけの規模の祭りができるという商業施設の駐車場の広さに、改めて感心した。
続いて、山車組が登場した。下田地区の山車の上では、個性的な生き人形が刀や手を振り、観客を楽しませていた。間近で見る動きは力強く、荘厳だった。戦後、この地区の祭りでは山車を作る予算が少なかったため、人が着飾ってふんしたのが生き人形の始まりだという。
また、百石地区上新町山車組の山車も手作りの華やかなもので、注目を集めていた。地元団体によるパイオニアソーランなどの踊りも好評だった。
運行のラストには、山車組が再び並び、お囃子(はやし)を披露した。どの組もライトアップされた山車の前で「ヤーレヤーレ」と声を張り上げ、笛や太鼓の音を響かせる。それぞれが最後まで、精いっぱい祭りを盛り上げようとしている姿に熱い思いを感じた。
フィナーレの花火に歓声
この日のフィナーレを飾ったのが花火だ。約3500発が次々と打ち上がり、来場者は歓声を上げながら楽しんだ。同時に「今年の秋祭りも終わりか」と、名残惜しむ声も聞かれた。
合同運行は12回目となり、県南地域の最後の山車祭りとして定着してきている。今後も町の観光を支える、大きな柱となり続けるだろう。
[文=デーリー東北新聞社三沢総局 柴田 佳弥]
[写真=デーリー東北新聞社写真部 大粒来 仁]
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