おいらせ町「向山駅ミュージアム」

2019/04/19 - ファンクラブ通信

重要な拠点だった向山駅

青い森鉄道三沢駅から八戸駅に向かって次の停車駅が「向山駅」になる。この駅周辺には、由緒ある気比神社、広大なカワヨグリーン牧場、観光農園「アグリの里おいらせ」など、家族連れで楽しめる観光名所があり、そのひとつに「向山駅ミュージアム」があるのだ。

かつて、向山駅はコメの集散駅であり、また近くには製糖工場もあったことから、貨物輸送の拠点でもあった。さらに国鉄時代には重要な駅だったことから、駅近くには駅員や保線区員などが寝泊まりする官舎も建っていた。また鉄道に関係する仕事に携わる人たちが、この地に移り住んだ人も多かったという。

向山駅はたくさんの利用客で賑わっていたが、1967(昭和42)年に工場が閉鎖された頃から利用客は次第に減り、1992(平成4)年に駅舎は無人化されてしまう。2010(平成22)年には東北新幹線全線開業に伴い、沿線は青い森鉄道に移管され、駅舎は長い間使われないままだった。

住民の手で復元された半世紀前の駅舎

それは2010(平成22)年の3月のことだった。駅周辺の向山町内会で駅舎を地域の憩いの場にしようと、県の許可を得て無人の駅事務室を清掃したことから始まった。

清掃活動をしたところ、国鉄時代の工具や日誌、事務机、金庫などがそのまま残っていた。さらに倉庫からはたくさんの〝お宝〟が出てきたのである。これらのものを展示するとともに、地域の活性化に利用できないものかと青い森鉄道の了解を得て「向山ミニミュージアム」を開館した。

町内会の人たちが自ら半世紀前の駅舎を復元。事務室だった場所にカーテンを取り付け、パネルを設置し、当時の机や椅子、金庫を置き、歴代駅長の名札や駅構内配置図などを展示し、国鉄時代を再現したのである。

オープンは、2011(平成23)年の11月だった。この小さな手作り博物館のことを知った、全国の元国鉄職員や鉄道ファンから様々な貴重な資料や写真などが寄贈され、鉄道ファンならず多くの一般の人が訪れるようになったという。

昭和時代にタイムスリップ

これまで管理運営は向山町内会が行ってきたが、6年前から「向山駅愛好会」が結成され、現在は同会で運営し、看板も「向山駅ミュージアム」と改めた。発足当初約30名の会員からだったが、今では地元おいらせ町はもちろん、全国からの会員を含め70名にも増えた。

「苦労という苦労はありません。強いて言うなら運営費が少ないことぐらい」と話すのは、開館当初は同町内会の会長であり、今は愛好会会長である中村淳悦さん(65)。

このミュージアムは、鉄道ファンだけではなく一般の人にとっても憩いの場であったり、地域の人との触れ合いの場でもあったり、周辺の観光情報を発信していく拠点となっている。和み、つなぐ輪といった「わ」になる場になればというのが中村さんたちの想いなのだ。そして、開館10周年に向けての取り組みが始まった。

一歩駅舎のミュージアムに足を踏み入れると、そこは昭和時代にタイムスリップ。大きな金庫にカンテラ、信号旗、ポイント、硬券(切符)入れ、切符に日付を刻印するダッチングマシン、切符切りなどなど、貴重な遺産が展示されている。

オリジナルクリアファイルも販売され、さらに奥へ入ると会員手作りの鉄道ジオラマが室内いっぱいに広がり、電車が走る光景に思わず食い入ってしまう。時間が経つのも忘れてしまいそうなミュージアムなのだ。

向山駅ミュージアム

[大人のための北東北エリアマガジン rakra ラ・クラ ライター 下池 康一]