移住者のライフスタイル川名 美夏さん(田子町 平成26年 Iターン)


川名美夏(かわな・みか)
昭和44年、兵庫県生まれ、神奈川県横浜市育ち。服飾専門学校を卒業後、アパレル、食品加工業などを経験。平成26年11月、東京都町田市より地域おこし協力隊として田子町にIターン。いちごを主軸とした農産物6次産業化に携わる。「いちご姫」の名前でFacebookやブログで情報発信中。

憧れの青森暮らしへ突き進む

 神奈川育ち、東京在住の川名美夏さんがⅠターンを決めたきっかけは、青森への旅行でした。
 「緑が濃いし、空が青いし、食べ物がおいしいし。こんなところで暮らせたらって」。
 それからの行動は迅速でした。「青森で暮らすなら仕事は農業。好きな作物を育てたい」と、趣味のお菓子作りに生かせるいちご栽培を決意。青森県の新規就農に関する資料を集めて、インターネットで探した県内のいちご農家に片っぱしから電話し、移住の希望と"弟子入り"を申し込みますが、すべて断られてしまいます。失意の川名さんの目に飛び込んできたのが、地域おこし協力隊の募集要項でした。
 「三八地域(※)の農産物が色々書いてある中、『いちご』と『田子町』の文字が近くに書かれてたんですね。今思うとたまたまだったんですけど(笑)。私、田子がにんにくの一大産地だって知らなかったんですよ。見た瞬間に、この町でいちごを育ててお菓子作る!って決めちゃった」。
 熱い思いで突き進んだ川名さん。面接でまたしても壁に突き当たります。
 「『にんにくじゃだめなの?』って町の皆さんに言われて『いちごじゃだめですか?』って答えたんです。最後は『新しい作物で頑張ってください』とのお言葉をいただきました」。
 特産物ではないいちごの6次産業化。戸惑う受け入れ側を川名さんの熱意が動かしました。

"田子のお父さん・お母さん"と目指す東京進出

 平成26年11月、晴れて地域おこし協力隊員になった川名さんは、田子町郊外にある旧レストランを活用し、加工品の開発拠点兼カフェ「Takko cafe」を開きました。6月~11月頃に収穫する「夏秋いちご」を70株から始めて現在は約400株、14種のいちごを栽培し、ジャムやペーストに加工してお菓子作りに励んでいます。
 カフェにはプラムやブルーベリー、ヤマブドウ、ジョミ(ガマズミ)など、町の農家が地場産フルーツを持ちこむこともしばしば。
 「千両梨にいちごの苗まで、色々いただくんです。あっちこっちに立ち寄ってお喋りしているうちに2時間経ってた、なんてこともあります」。
 昨夏は地元の高校生に教わり、独特の盆踊り「ナニャドヤラ」を習得。冬場は町内のスキー場で仕事帰りにひと滑り。田子ライフを満喫する川名さんの一番のお気に入りは「満天の星空」とか。
 「大黒森の山の斜面にシートを敷いて、寝転がって星を見るのが好き。流星群の日じゃなくても流れ星が見えるんですよ」と瞳を輝かせながら話してくれました。
 目下の目標は、都内のアンテナショップ「青森県たっこまち」(汐留)への出品。カフェを拠点に新たな特産品を開発するため、町民向け会員制度「Takko cafe club」を企画して仲間を募っています。
 「農業も田舎暮らしも初めてでしたが、今は“田子のお父さん・お母さん”がいっぱい」と川名さん。町民と手を携え、夢を追いかけています。

移住者のライフスタイル

 移住先は「ほどよい田舎」が人気です。
 生活するうえで必要な都市機能を備えながらも身近に美しい自然が広がり、人と人の支え合いが根付く暮らし。そんな便利さと暮らしやすさを兼ね備えた生活空間がここにはあります。
 物質的な豊かさは都会ほどではないかもしれません。
 でも、心にゆとりを与えてくれる人との絆がここにはあります。人との絆を、個人の制約ではなく個人の楽しみに変えることができる人に、この地で半都半邑の楽しさを味わってほしいのです。