移住者のライフスタイル工藤 健徒さん (三戸町 令和2年 Uターン)

工藤 健徒(くどう・けんと)
1994年生まれ。高校卒業後、東京都の専門学校で2年間料理を学ぶ。都内のレストランに勤務したのち、居酒屋の店長に。調理、接客、人材育成など多くの経験を積み、2020年6月三戸町へUターン。移住から半年後に「居酒屋あんべ」を開店し、21年には2号店となる「カラオケバーいくべ」を開店。

予期しなかった生活の変化迷った末のUターン

 城下町の風情が残る三戸町中心部。その一角にある『居酒屋あんべ』は、新鮮なお刺身からシメのラーメンまで、さまざまな味わいが楽しめると評判。店を営む工藤健徒さんの気さくな人柄も、人気の秘訣です。
 三戸町で生まれ育った工藤さん。高校卒業後、かねてから興味のあった料理の道を目指し、東京の専門学校に進学。卒業後は都内のイタリアンレストランに就職し、約2年間、調理や接客の修業を積みました。23歳の時、学生時代にアルバイトをしていた居酒屋のオーナーから声をかけられ、店長に就任。売り上げ、原価管理、人材育成といった経営の基礎を学び、着実にキャリアを重ねていきます。
 「東京で店を開く」という夢の実現に向け、忙しいながらも充実した日々を送っていた工藤さん。その生活は、新型コロナウィルスの感染拡大により変化します。
 2020年の春、勤めていた居酒屋の系列店が閉店に。先の読めない状況の中、迷った末に出した答えは「いったん、地元に帰ろう」でした。

三戸の街を元気に。そして、もっと魅力的な場所に

 「コロナが落ち着いたら、また東京へ行くつもりでした。正直言うと、こっちで店をやるつもりはなかったんです」
 ところが、戻って目にした三戸の街は、かつての賑やかさを失いつつありました。
 「夜の街が真っ暗で静かなんです。すごく寂しかったですね。夜の店をやれば、若い人が街に出てくるようになって、少しは活気づくかなと思って」
 飲食の経験を生かし、街を元気づけたい。こうして工藤さんは、居酒屋の開店を決意します。店名の『あんべ』は、南部弁で『行こう』の意味。気軽に立ち寄れるお店になるようにと、父親が命名してくれました。
 「料理だけでなく、店の雰囲気も味のひとつ」と話す工藤さん。大切にしているのは、お客さんとの会話。「お客さんに『楽しかった』と笑顔で帰ってもらうのが一番のやりがいです」と顔をほころばせます。
 21年8月には『あんべ』のはす向かいにあった空き店舗を改修し、2号店となる『カラオケバーいくべ』を開店。週末はどちらも賑わいを見せるそうで、地元の方に愛される店になりつつあります。
 Uターンを機に、三戸をもっと魅力的な場所にしたいと考えるようになった工藤さん。これからの夢を尋ねると、目を輝かせながらこう話してくれました。
 「ゆくゆくは、農業体験やテントサウナなど、自然を満喫できる要素を組み入れた『三戸郡ツアー』を開催して、地域を盛り上げたい。この店を起点に色々な事を仕掛けていきたいと思っています」。

移住者のライフスタイル

 移住先は「ほどよい田舎」が人気です。
 生活するうえで必要な都市機能を備えながらも身近に美しい自然が広がり、人と人の支え合いが根付く暮らし。そんな便利さと暮らしやすさを兼ね備えた生活空間がここにはあります。
 物質的な豊かさは都会ほどではないかもしれません。
 でも、心にゆとりを与えてくれる人との絆がここにはあります。人との絆を、個人の制約ではなく個人の楽しみに変えることができる人に、この地で半都半邑の楽しさを味わってほしいのです。