青森の食の魅力発信 人気の居酒屋

2019/09/21 - ファンクラブ通信

驚きの脂の乗り、八戸前沖さば

古くは「江戸四宿」の一つとして栄え、再開発が進む近年は若者も多く行き交う東京・北千住。駅西口から5分ほど歩いた商店街のビルの2階に、青森県八戸市出身の西村直剛さん(51)が経営する人気の居酒屋「炭火焼ごっつり」がある。八戸三社大祭の山車が描かれた看板には、「食材の決め手は青森県産」とのキャッチフレーズが躍る。

ドアを開け、まず目に入るのは壁一面を埋め尽くすメニュー。「八戸前沖さば県外PRショップ」に認定されているこの店が一押しのサバの串焼きや棒ずし、青森県南の農家から取り寄せるナガイモやニンニクなどを使った料理が食欲をかき立てる。

実にそのメニューの数は? 「100種類近く。気が遠くなるでしょ」。ユーモアを交えて説明する西村さんが、こう胸を張って続けた。

「前沖さばの脂の乗りは日本一と言って間違いない。どこにでもある魚だから、初めて見た人は『えっ、サバ?』と反応するけど、一度食べたら『えー! サバー!』とびっくりするよ」

「うちは料理屋じゃなくて居酒屋。かしこまらずに楽しく飲んでほしい」と話すように、取材に訪れた平日の夕方も、仕事帰りのサラリーマンや和気あいあいとした女子会の笑い声があちこちで響く。気付けば40席余りの店内が満杯に。その傍らで、なじみの客とグラスを片手に談笑するのが西村さんのスタイルだ。

活路を見いだす

店が現在の形に落ち着くまでには紆余(うよ)曲折があった。

西村さんは大学時代のアルバイト先だった大手運送会社に就職したが、激務がたたり、40歳でサラリーマン生活にピリオドを打った。半年ほどして商売を始めたいと一念発起した時、頭に浮かんだのが飲食業だった。

未経験の分野だったため、まずはノウハウを学ぼうと、ホルモンチェーンのフランチャイズ加盟店の運営に挑戦した。ただ、出足こそホルモンブームの波に乗って好調だったが、レバ刺しの規制強化とともに客足が鈍り始めた。

3年間の契約満了をもって独立。形態を居酒屋に切り替え、複数の店舗を手掛けたが、苦悩は深まるばかりだった。契約期間後も続くフランチャイズの「縛り」によって提供できるメニューは限られ、店のコンセプトが定まらない。その間、別の場所に構えた店舗の一つが閉店した。

西村さんが「暗黒の時代だった」と振り返るこの当時、活路を見いだしてくれた人物が「日本の味俵屋」(同市)の代表を務める沢上弘さんだった。

ある年の冬。八戸に帰省中の西村さんが中心街を飲み歩いていると、幼少の頃から40年以上の付き合いが続く沢上さんと偶然再会した。「沢上さんの店に呼ばれて、そこで薦められたのがサバの串焼き。『八戸のサバってこんなにおいしかったっけ?』と驚いた。あの晩がなかったら、今もサバを使っていたかどうか分からない」

店の方向性が固まり、「自分が得意な青森の食材を使って、駄目なら飲食を辞めてもいいと開き直った」と西村さん。今や経営する3店舗の人気はもちろん、都内での県産品PRイベントにも引っ張りだこだ。

鮮度の良さが売り

年間十数㌧を買い付けるサバの他、メニューに並ぶ他の魚も県内の漁港で神経締めした鮮度の良さが売り。運送業界に関わった経験から、独自に編み出した配送ルートを使って輸送費を抑え、価格への転嫁を避ける工夫も凝らす。

目下の目標は新規出店という。「青森の食の魅力を広めていくのが自分の使命だと思っている。年明けに1店舗を出すことが決まっているけど、場所はまだ内緒だよ」。西村さんが不敵な笑みを浮かべた。

(※本文中の年齢は取材時点)

[デーリー東北新聞社東京支社編集部 藤野 武]

※以下は3店舗の情報

炭火焼ごっつり:東京都足立区千住2の31 白石ビル2階=電話03(5244)1696→今回の取材場所

▽串焼ごっつり:東京都足立区千住旭町41の17=電話03(3870)1094

▽ごっつり南千住店:東京都荒川区南千住7の29の2=電話03(6806)8343

 

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