青森県の伝統工芸品「五戸ばおり」を学ぶ

2019/07/12 - ファンクラブ通信

ばおりは南部美人の必需品

ばおりは南部地方、特に内陸の地域で愛されてきた編笠の一種だ。材料になるのは畳の原料でお馴染みのイグサとタケ。「三戸ばおり」や「三本木ばおり」など、南部地方各地に色々な形で伝わっているばおり。中でも「ばおりのふるさと」とされるのが五戸町蛯川地区。ここでつくられたものが「五戸ばおり」である。

元々は蛯川に住んでいた武士が、江戸時代頃に考案したといわれている。農閑期の手仕事で、昔は各家庭でつくっていた。蛯川は竹林が多くて材料に恵まれていたこともあり、五戸ばおりはとても品質が良かった。そのため、市に持っていくと飛ぶように売れたのだ。各地に伝承されているのは、蛯川の出身者が移り住んだ場所でもつくり続けたからだという説もある。

カウボーイハットを深くしたようなルックスで、前後のツバは三角型になっているのが五戸ばおりの特徴だ。この形状のおかげで日差しをバッチリと防ぎながら、広い視野が確保できる。そして雨の日には、水分を含んだイグサが膨張して雨水をガード。おまけに被ると、周囲からは口元しか見えない。美人効果も備えた優れものだ。ばおりは女性たちが農作業や野良仕事をする際のマストアイテムだった。

伝統の技を再び

人気の五戸ばおりだったが、安価なビニール製品や麦わら帽子が主流になると、実用品として使う人はすっかり減ってしまう。「今は踊りとか郷土芸能用として使う人が多いね。俺が子供の時はまだ農作業に使ってる人がいたよ」。そう話すのは五戸ばおりづくりをしている稲村幸男さんだ。時代の流れと共につくり手も減り、この時代に五戸ばおりをつくれるのは稲村さんただ一人だ。

稲村さんは50歳の頃からばおりをつくり始めた。きっかけは川村長八さんという、ばおりづくりの名人が残したつくりかけのばおり。これを完成させたいという相談を受けおったのが、稲村さんの父、政吉さんだった。「長八さんが亡くなってから20年の間、ばおりの歴史が途絶えてた。子供の頃から『つくってみたいな』と思ってたんだ。でも親父がつくれるなんて全然知らなかったよ」。父から教えを受けながら稲村さんは技を習得。間もなくに政吉さんは他界してしまうが、稲村さんは会社勤めの傍ら、技法を忘れないように毎年つくり続けてきた。

イグサとタケが生み出す究極の心地よさ

ばおりづくりには、硬さの違う2つのイグサを用意する。これを叩いて柔らかくし、霧吹きで湿らせながら均等の間隔で円筒状に編んでゆく。カーブしている部分は、イグサの本数を減らしながら編む。束のままだと強度がありすぎて、キレイな曲線が出ない。上から下にかけて、段々と使うイグサの本数を減らしていくイメージ。この調整がばおりづくりで最も難しいところだ。

編み終えたら庇になる末端に、太さが5ミリほどのタケを通す。使うのは5年モノのコシがあるタケがベスト。イグサがタケの力でピンと引っ張られて、あの独特でしなやかなアーチを描く。

「昔のばおりは、編目がビッチリしていてかっこいい。自分で納得するものはまだつくれていない」と稲村さん。そうは言うものの、完成したばおりは、フォルムが引き締まって素晴らしい見栄えだ。頭に乗せてみると軽さのあまり、被っているのを忘れるほど。イグサの香りと通気性も良くて、今の時代にも十分通じる快適さだ。

五戸ばおりが続いていけるように

稲村さんに伺うと、昔のばおりのほうが性能がいいという。その要因は材料だ。昔の農家はばおりをつくるために、田んぼの一角でイグサを育てていた。収穫したイグサは、蒸した後に乾燥させて初めて使うことができる。この在庫もあと2年ほどで底をつくそうで、稲村さんも近年は栽培するようになった。ばおりに使えるような、コシのあるイグサを育てるのは中々難しいそうだ。

また、その技を絶やすまいと、5年前からは公民館で講座を開いている。毎年1〜2月に1周間限定の開催で定員は5名。その様子を覗かせてもらうと、参加者の皆さんが黙々と手を動かしていた。「今教えてる人の中に上手な人がいてね。俺なんかすぐに越されちゃうよ」と稲村さん。ゆくゆくは技を習得した人たちが、材料の栽培にも携わってくれるの願いなのだとか。

近年、五戸ばおりの注目度が高まり、稲村さんの元にも問合せが多い。しかしばおりは道具だ。もったいないと保管しておくよりも、ボロボロになるまで使い込んでほしい。「お金じゃなく、使ってもらえる人に届けたい。この前は中学校から『田植踊り用』にと頼まれて納めたんだ。やっぱり女性がかぶると似合うね。バサマ(お婆さん)も10歳若返るよ」。いつの日か再び、ばおりをかぶって農作業をする光景を見たい。それが稲村さんが技を伝えるモチベーションになっている。

● 青森県庁青森県の伝統工芸品(五戸バオリ)

https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/shoko/chiikisangyo/aomori_dento-kogei_gonohebaori.html

● 五戸町 http://www.town.gonohe.aomori.jp

● 五戸町観光協会「まるっとごのへ」 https://www.gonohe-kankou.jp

 

[大人のための北東北エリアマガジン rakra ラ・クラ ライター 小田切 孝太郎]

 

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