おいらせ黒ホッキ(貝)

2020/03/07 - ファンクラブ通信

なぜ殻が黒くなる?

毎年12月~3月にかけて、八戸市、おいらせ町、三沢市の沖合、通称・北浜海域で漁獲されるホッキガイ(北寄貝)は地域を代表する冬の味覚だ。中でも、おいらせ町沖で水揚げされるホッキガイは「おいらせ黒ホッキ(貝)」としてブランド化を目指している。

一般的なホッキガイ(「白ホッキ」「茶ホッキ」とも言われる)に比べて、黒ホッキは文字通り殻が黒くて薄く、身が厚いのが特徴だ。ふっくらとした身は、火を通すと鮮やかな濃いピンク色に変わる。

殻が黒くなる理由ははっきりとは分かっていないが、奥入瀬川から太平洋に流れ込む水や、おいらせ町沖の砂や泥に豊富なミネラルが含まれているからではないかと言われている。ゆえに身も自然とおいしくなるというわけだ。

いざ冬のホッキガイ漁へ

今季のホッキガイ漁が解禁された2019年12月2日。おいらせ町にある百石町漁協の協力を得て漁に同行させてもらった。乗船したのは彗星丸という漁船で、乗組員は船長の北向清吉さんら5人。まだ日が昇らない午前6時半ごろ、百石漁港を出港し、約5分で沖合500~700㍍にたどり着いた。そこで、噴流式マンガン(桁網)と呼ばれる漁具を海中に投入する。この漁具は高圧ポンプで海水を噴射し、海底の砂を巻き上げてホッキガイを掘り起こす仕組みだ。

波で漁船が大きく揺れ、私は立っているだけで精いっぱいだったが、北向さんたちは手際よく作業を進め、20分ほどで漁具を引き揚げた。桁網の中にはホッキガイがたくさん入っており、あっという間に甲板が埋め尽くされる。その後、ホッキガイについた砂や泥を海水で洗い流し、発泡スチロールの箱に詰めていく。この日は桁網を下ろす場所を変えながら4、5回この作業を繰り返した。

漁港に戻ると、ホッキガイの入った発泡スチロールがトラックに積み込まれ、八戸市の魚市場へと運ばれていった。北向さんは「今季のホッキは身が大きくて、おいしい。旬の味を楽しんでほしい」と手ごたえを感じた様子で、「ホッキ漁はこの地域では伝統的な漁。漁業資源を大切にしながら守っていきたい」と力を込めた。

バスツアー客対象のホッキ小屋

町内にある観光農園アグリの里おいらせでは、おいらせブランド推進協議会がツアー客を対象にした「おいらせホッキ小屋」を営業している。新鮮な魚介類を楽しめる施設としては「カキ小屋」「ホタテ小屋」が一般的だが、ホッキ小屋は全国的にも珍しいという。

2020年1月26日、津軽地域などからのバスツアー客14人が訪れた場面を取材した。一行は町職員から黒ホッキについての説明を受けた後、百石町漁協女性部のメンバーにホッキガイのさばき方を学んだ。あっという間に貝を開き、身を取り出す手さばきに、ツアー客の誰もが感心。ご飯のお供にもお酒のつまみにもなる郷土料理「ホッキ味噌」の調理実演では、女性部のメンバーが細かく刻んだホッキガイに卵や味噌、みりんなどを混ぜ合わせて炒めると、辺りに味噌が焼けた良い香りが広がり、大いに食欲をそそった。

いよいよ黒ホッキを食す

この日用意されたメニューは、新鮮な刺し身やしゃぶしゃぶ、炭火焼、スープなど、まさに黒ホッキ尽くし。ツアー客はフルコースのほかに、作ったばかりのホッキ味噌を熱々のご飯の上に乗せて食べ、「甘い」「おいしい」などと笑顔で感想を口にしていた。青森市から参加した女性は「ホッキガイは肉厚で甘みがあり、かむとほんのり塩気があるので、生でもとてもおいしい。黒ホッキの知識も身につきました」と満足そうに話した。

ホッキ小屋で黒ホッキのフルコースを楽しむにはバスツアーに参加しなければならないが、町内でホッキガイを楽しむことができる飲食店もある。漁期は3月まで。

[デーリー東北新聞社三沢総局・柴田佳弥]

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