〝一滴入魂〟 五戸の地酒・菊駒で今夜もほろ酔い

2020/02/29 - ファンクラブ通信

酒造一念・銘柄萬年

水が豊富に湧き出る青森県五戸町の川原町という地区に、日本酒「菊駒」を製造する菊駒酒造がある。

菊駒は、五戸と近隣の市町村を中心に愛飲されている。菊駒酒造は2020年10月、創業110周年を迎える。「酒造一念 銘柄萬年」の理念の下、地元の風土に合わせ、飽きずに飲まれ続ける酒造りを目指している。

「各地の日本酒は、その土地の食文化に影響されながら造られてきた」と話すのは、20年4月で就任から10年になる三浦弘文社長(39)。

五戸地方の特産は、馬肉、ゴボウ、ニンニク、ナガイモなど滋味豊かな〝山の物〟だ。菊駒はこれらの食材に合うよう、しっかりとしたこくと、うま味を重視した酒造りを行っているという。

明治中期からの造り酒屋

菊駒酒造を営んできた三浦家は代々、当主が久次(治)郎を名乗り、地元では「三久(さんきゅう)」の屋号で知られる。三浦社長の先代からは襲名していないが、社長は7代目に当たる。

造り酒屋を営むようになったのは、明治中期の1889年。その後、1910年に4代目久次郎が三泉(さんせん)酒造を設立し、菊駒酒造はこれを創業としている。

当初の銘柄は「三泉正宗」だったが、菊作りの名人でもあった4代目は後に、五戸名産の馬(駒)と合わせて「菊駒」に改称した。

三泉酒造から三久酒造店に名を変えていた44年、戦時中の企業統制令により三八地方の酒蔵が統合。八戸酒類が誕生し、酒造免許が一本化された。 三久酒造店は卸小売業として存続したが、蔵は八戸酒類の製造拠点の一つの菊駒工場になり、菊駒の銘柄が造られ続けた。

5代目久次郎の時代の70年代後半からは、全国新酒鑑評会で金賞の常連となり、菊駒の名は全国区になった。

2008年、菊駒酒造として八戸酒類から独立。旧工場は現在も八戸酒類が使用しているため、菊駒酒造は数百㍍離れた場所に工場を借り、新生・菊駒を醸造している。

1番人気は純米酒

商品は通年と季節限定の販売を合わせ、全部で14種類ある。

1番人気は5代目が商品化した「純米酒」で、ラベルに「一滴入魂」の文字を入れた自信作だ。香りをあえて抑えたアンティークな味わいで、雑味が少ない小川酵母(日本醸造協会10号酵母)を使用して造っている。

小川酵母は菊駒商品の8割で使われる菊駒の〝基本〟。この酵母について、発祥蔵は明らかにされていないが、菊駒がその一つとして有力視されている。

日常の飾らない晩酌用には「小菊」、贈答用には「大吟醸」がお薦めだ。

三浦社長は「今は元々、酒蔵ではなかった場所で酒造りをしているので、できることに限りはある。瓶詰めもラベル貼りも手作業なのだが、その分、手作りの良さが伝われば。酒蔵があることが、地域にとってプラスになると信じ、維持していきたい」と話す。

(※本文中の年齢は取材時点)

[デーリー東北新聞社五戸支局支局長 出川しのぶ]

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