古里の味「三戸精品」
地域の“宝”掘り起こせ
国が進める地方創生の一環として、三戸町と民間会社の共同出資により、2019年1月に設立された地域商社「SANNOWA」。地元の人以外にはあまり知られていない農産物など、ふるさとの“宝”を掘り起こし、商品開発や販路開拓に当たる。
地域商社設立に向け、町は17年度に町内の商工・農業関係者らをメンバーとする専門委員会を設置。2年で加工品の試作やテスト販売などを行い、「三戸精品」のブランドを立ち上げた。
同社の仕事の一つが、このブランドの管理だ。前身の委員会から引き継いだ商品もあり、会社設立から1年足らずながら、扱う商品はジュースや地ビール、ジャム、ドライフルーツなど10種類を超える。
三戸産ホップ復活へ「エール」
19年度に新発売した「里山紅玉エール」は、町内で栽培が盛んなリンゴ「紅玉」の果汁を加えた地ビール。生産コストが膨らみ、330㍉㍑入りが1本869円(税込み)と、類似の商品に比べて高めの価格設定ながら、出荷した1700本がわずか4カ月で完売した。
町内ではかつて、ビールの原料となるホップも生産されていた。だが、農家の高齢化や人手不足などで栽培面積は徐々に縮小し、18年度はとうとう生産者がゼロとなっていた。
同社ではホップの復活プロジェクトにも着手。青森県内では1軒だけとなった隣の田子町の農家から協力を得て、19年度から試験栽培を始めた。
里山紅玉エールの原料には現在、海外産ホップを使用するが、いずれは復活した町内産に切り替えることが同社の夢。商品にまつわる物語が付加価値を生む。
樹齢100年の紅玉をジュースに
ジュースも売れ筋商品だ。リンゴジュースは3種類あり、中でも「百年紅玉ジュース」は特別。樹齢100年の木から収穫した希少な紅玉を贅沢に使用しており、価格は720㍉㍑入りで1本2750円(同)と、同社の「紅玉ジュース」の倍以上もする。200㍉㍑入りの飲みきりサイズの商品を新たに加えるなど、手に取ってもらいやすいよう工夫も凝らす。
三戸精品は、町内の「道の駅さんのへ」などで購入できる。町によると、一部はふるさと納税の返礼品としても受けることができる。
農家に代わり販路開拓
SANNOWAが手掛けるのは、加工品の販売ばかりではない。生果の出荷も販路拡大の可能性を秘める。
農家が、個人で販路を開拓しようと思っても、収穫作業に追われたり、つてがなかったりして苦労しているのが現状。生果として出荷できる物でも、やむなく安価な加工用に回すケースもある。
同社の強みは、フットワークの軽さ。行政の持つ情報網も生かして各地の物産展に出向き、産地と消費地をつなぐ。
こうした努力が実り始めており、菓子などの原料としても需要が高い紅玉は、全国展開するベーカリーチェーンの期間限定メニューに採用された。町内の農家が開発した、団子ほどの大きさの「ミニふじ」も、首都圏のレストランなどから引き合いが来ている。初年度の取引先は40カ所を超える見通しだ。
同社の吉田広史社長(42)は「販売はまだまだ伸びる可能性がある。さまざまな課題も見えてきており、今後は優先順位をつけて、いかにスピーディーに対応していくかが大事だ」と話す。
SANNOWAの事務所は、三戸町八日町48の3、電話0179(23)0305。
三戸精品HP: http://sannohe-seihin.jp/
【デーリー東北新聞社三戸支局支局長 金澤一能】
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