守り継がれた変わらない味 三島サイダー
100年変わらぬ味を
キリッとした強めの炭酸から感じる、シトラスを思わせるすっきりした甘さ。爽やかな喉越しは、まるで八戸の潮風のよう―。
八戸市の館鼻漁港にほど近い、同市白銀町にある八戸製氷冷蔵が手掛ける、ロングセラーの地サイダー「三島シトロン」。翼を大きく広げるカモメのマークが目印のこのサイダーが世に出たのは、1922(大正11)年のことだ。それから約100年。受け継がれてきた味を変えることなく、今も多くの市民の喉をうるおしている。
そのおいしさの秘密を、同社常務の橋本俊二さんに聞いてみた。「やはり、地元白銀の名水『三島の湧き水』だね」とずばり。「八戸石灰層の下をくぐって湧き出る三島の湧き水は、カルシウムなどのミネラル分がたっぷり含まれている」と教えてくれた。そんな三島の天然水に炭酸ガスを注入し、自社で調合したオリジナルのシロップを混ぜて作るサイダーの製法は、昔も今も変わらない。
高度経済成長期であった昭和30年代、高級品であったバナナの風味を感じてほしいとの思いで発売したのが、三島シトロンと並ぶ看板商品の「みしまバナナサイダー」。バナナを思わせる香りがする淡い黄色のサイダーには、どこか懐かしさを感じられる甘さがあり、今も根強い人気を誇っている。
また、一度は販売を休止したものの、ファンからの熱烈なラブコールに応えて2020年に復活した「ガラナスパークリング」は、滋養強壮に良いといわれている中南米原産の赤い果実・ガラナのエキスが入った、甘さ控えめの大人のサイダー。香り高いガラナの独特な風味が鼻から抜ける感じがたまらない一品だ。
どす黒い清涼感
「八戸らしい、新しいサイダーを作ろう」と、同社社員が話し合って19年に発売したのが、「イカスミサイダー」だ。キャッチコピーは「どす黒い清涼感」。21年にじゃらんが行った「味の想像がつかないご当地サイダーランキング」で3位を獲得した、この漆黒のサイダーの味を、皆さん想像できるだろうか?
覚悟を決めていざ飲んでみると、ほんのり甘く、優しい味がする。いい意味で、見た目のインパクトを裏切ってくれる。
「一時期だけ売れる、いわゆる『ゲテモノ』にはしたくなかった」と橋本さん。イカスミはあくまでも着色料として使ったそうで、イカの風味は一切しないし、飲んだ後に歯が黒くなることもないのでご安心を。
お酒との相性も抜群
実はお酒との組み合わせも楽しめる三島サイダーシリーズ。ウイスキーに、三島シトロンやガラナスパークリングを注いで作るハイボールは絶品だ。また、シトロンは日本酒、ガラナは焼酎の割り材にぴったり。
そしてぜひ飲んでほしいのが、バナナサイダーと、八戸ワイナリーの白ワイン「八戸ワイン ナイアガラ無濾過2019」を1対1で混ぜるオリジナルカクテル「シーガルスプリッツァー」。甘いバナナサイダーと、辛口のワインが奏でるハーモニーからはきっと、八戸の風の香りを感じられるだろう。
三島サイダーは、八戸市内のスーパーなどではもちろん、みしまサイダー公式オンラインショップ、そして東京都内では「8base」で購入可能。橋本さんは「昔ながらの変わらない味を楽しみながら、ぜひ八戸のことを思ってほしい」と話していた。
※「8base」では現在、ガラナスパークリングの取り扱いはありません。
(デーリー東北新聞社業務推進部 ライター 田名部瑠衣)