八戸発!香り高いクラフトビール「八戸麦酒」

2023/10/12 - ファンクラブ通信 | 八戸市

ドイツのビールに魅せられて

小規模な醸造所が造る「クラフトビール」。その一杯には、それぞれの醸造所にいる職人の知識と技を生かした、個性的な味わいと香りが詰まっている。

八戸市中心部から車で約30分。豊かな自然が息づく南郷地区に建つ「カネク醸造」は、旧給食センターの建物を再活用して生まれたクラフトビール醸造所だ。この醸造所を立ち上げたのは、同市の機械修理業「ハード工業」の創業者。2011年に仕事で訪れたドイツで、クラフトビールの奥深さに魅せられたという。帰国後、ドイツで飲んだ思い出の味を探し求めてみたものの、当時の八戸ではなかなか手に入れることができなかった。

数年後、日本各地でクラフトビールが生まれ一大ブームに。「自分の手で八戸ならではのクラフトビールを造りたい」。創業者はハード工業の事業を息子に承継、20年に不退転の決意でカネク醸造を立ち上げ、クラフトビールの研究に専念し始めた。全くの異業種からの転身。そこにはクラフトビール造りへの情熱と共に、「地元の若者たちの雇用にもつなげたい」との思いもあったそうだ。

小さな醸造所ならではの個性的な商品

酒税法では「発泡酒」に分類される同社のクラフトビール。現在製造にあたるのは、坂本健太工場長ら3人だ。淡い色のペールエールはもちろん、色の濃い麦芽を使い、しっかりとした飲み応えに仕上げた黒ビール「ポーター」、ライチやグレープフルーツを使ったフルーティーなクラフトビール、地元のプロスポーツチーム(ヴァンラーレ八戸、東北フリーブレイズ)に〝エール〟を送るコラボ商品など、小さな醸造所ならではの個性的な商品を次々に生み出してきた。

坂本工場長は「まずは自分たちがおいしいと思えるものが第一。そして皆さんにいつまでも愛される、高品質で飽きの来ないクラフトビールを目指しています」と意欲を見せる。

まず1種類飲んでみようと思ったら、黄色いラベルの「ゴールデンライトエール」がお勧めだ。ホップと青森県産米「まっしぐら」を使用し、喉ごし良く仕上げた。すっきりとした口当たりで、どんな料理にも合う。そしてゴールデンライトエールと並ぶ看板商品は、ピンクのラベルの「ヘイジーIPA(インディアペールエール)」。6種類のホップをたっぷり使った華やかな香りのトロピカルテイストで、女性からの人気も高い。水色のラベルは、小麦を使ったドイツの伝統的なスタイルである「ヴァイツェン」。バナナのような香りと、まろやかな酸味が楽しめる。

商品を彩るラベルには、トランペット、コントラバス、サックスといった楽器を持ったかわいらしい猫のイラストがあしらわれている。モデルは創業者の自宅で飼っている3匹の猫。毎年夏にジャズフェスティバルが開かれ、昔から「ジャズの街」として親しまれている南郷地区らしさがあふれるラベルデザインもポイントだ。

アメリカを〝超える〟新たな挑戦

クラフトビールの原料となるホップは、スパイシーな香りのするもの、柑橘を思わせる香りのものなど100種類以上もあり、ブレンドによって味わいはもちろん、色や香りも多彩に変化する。

「クラフトビール造りは本当に果てしないです。でもそれが面白い」坂本さんはそう笑う。ホップの組み合わせは無限にあり、どのようなビールを造りたいかイメージを膨らませてから、使うホップのブレンドを決めていく。まさに職人技の見せどころだ。

23年春、社長と社員全員でアメリカ西海岸地区のクラフトビールの醸造技術を学ぶ旅に出た。そこで味わったのは、ホップを大量に使い、豊かな香りと濃厚な味わいのする西海岸ならではのクラフトビール「ウエストコーストIPA」だ。そして帰国後、現地で得た知識を詰め込んだのが、9月に発売されたトリプルIPAGo Beyond」。その名の通り、アメリカのクラフトビールを超えるための新たな挑戦の幕が開いた

9月中旬からの出荷分は全て非加熱処理に変更し、ホップの香りとコクの深さをより一層味わえるようになった。進化を続ける八戸発のクラフトビールは、地元だけではなく、東京の「8base」でも購入可能だ。

8baseでの取り扱いは一部銘柄のみになります。

(デーリー東北新聞社ソリューション営業部 ライター 田名部瑠衣)