どれがお好み?「むつ食品のフライシリーズ」
あのプロ野球選手の大好物!
八戸市民に長年親しまれている「むつ食品」は、手作りの総菜や弁当の製造販売を行っている。その代名詞と言えば、一度食べればとりこになってしまう、お手頃価格のフライシリーズだ。八戸で高校時代を過ごした人の中には、購買にフライを買いに走った思い出を持つ人もいるだろう。
現在4種類あるフライシリーズの中でも、生姜醤油で下味を付けた地元産鶏胸肉と千切りキャベツをパン粉で包んで揚げた「チキンカツ」は、昔も今も、食べ盛りの男子高校生から圧倒的な人気を誇る。プロ野球・読売ジャイアンツで活躍している坂本勇人選手(光星学院高=現・八戸学院光星高=出身)の高校時代の大好物でもあったそうだ。
フライシリーズの産みの親は、社名の由来にもなっている、同社社長の岩舘陸奥子(いわだて・むつこ)さんだ。精肉店に勤めていた陸奥子さんは、24歳になる直前の1974年7月、現在の本社店舗(八戸市田面木)にほど近い場所に「むつ精肉店」を独立開業した。しかし翌年、近所にスーパーが開店したことにより客足は遠のいてしまう。
そこで始めたのが、独立前に勤めていた精肉店でも作っていた焼き鳥や、コロッケ、カツといった総菜の販売だった。口コミで人気が広がり、一日中焼き鳥や揚げ物を作っている状況の中、知人から声を掛けられ、81年に青森県立八戸高校の購買で揚げ物の販売を始めたのが、陸奥子さんと、2014年に他界した夫の晴男さんにとって大きなターニングポイントになった。
昔も今も、早朝から手作り
「当時、八戸高校は授業の前に朝学習の時間があって、生徒はみんな朝早く登校するんです。だから2時間目が終わるとおなかがすいてしまうとのことで、その時間に合わせて売りに行っていました」と陸奥子さん。最初は店舗でも売っていた串カツなどを持って行っていたが、高校生が安くておなかいっぱいになるにはどうすればいいか、晴男さんと話し合って生まれたのがチキンカツだ。チキンカツは飛ぶように売れ、同校から転任した教師からのつながりで販売先の学校もどんどん増えていった。時代の流れと共に具材は少しずつ変化したが、昔も今も、早朝から一つ一つ人の手で成形して揚げていく過程は変わらない。
フライシリーズの一番人気はやはりチキンカツだが、お好み焼きをイメージした「お好みフライ」も食べ応えたっぷりでお勧めだ。小麦粉にイカ、キャベツ、紅ショウガ、青のりを混ぜて和風だしで味付けして揚げ、仕上げにソースをかけている。
また、ジューシーな合いびき肉がたっぷり入った「メンチカツ」は、陸奥子さんが精肉店勤務時代に教わったハンバーグのたねをフライに応用した、お肉好きにはたまらない一品だ。そして女性に人気の「グラタンフライ」には、たっぷりのホワイトソースに包まれた鶏肉やマカロニが入っている。これは陸奥子さんも子どもたちも大好きだったグラタンをどうすればフライにできるか試行錯誤したところ、冷えて固まったグラタンを春巻きの皮に包んで揚げてみたら簡単においしくできたので、商品化につながったそうだ。
余談だが、昔は高校限定で、ちくわやハムチーズ、ギョーザ、ゆで卵のフライも販売していたとのこと。一度食べてみたいものだ。
忘れがたき青春の味
店の休日は大みそかだけ。70歳を越えた今でもパワフルに働く陸奥子さんの原動力は、フライシリーズを片手に友人と語り合ったり、勉強をしたりしながら大人になったかつての高校生たちが、忘れられない青春の味を求めて来店することだ。当時の思い出話にもつい花が咲く。そしてその人たちの子どももまた、親が青春時代に食べていたフライを食べて育っている。フライシリーズが生まれて40年余り。世代を超えて愛される味となった。
現在、エイトベースでも八戸から直送されたフライシリーズの取り扱いがある。八戸で過ごしたことがある人ならば、そのパッケージを見ただけで八戸の地を思い、つい手に取ってしまうだろう。もし八戸に来たことがない人は、地元食材を使った、八戸ならではのお手頃なグルメをぜひ味わってほしい。※フライシリーズの入荷日は、エイトベースのインスタグラム(@8base_okuroji)で事前にお知らせしています。ぜひフォローしてください。
(デーリー東北新聞社ソリューション営業部 ライター 田名部瑠衣)