三戸の家庭の味、素朴なコナモン「ひっつみ」。
三戸に伝わる郷土料理「ひっつみ」とは?
八戸市から車で1時間弱。青森の県南に位置する三戸町は、「やませ」という冷たく湿った季節風の影響で水稲栽培が困難であったため、麦やそばを食するコナモン文化が発達してきた地域である。そんな三戸のソウルフードである「ひっつみ」は、昔から日常の食卓にあがり、よく食べられてきた家庭の味だ。いわゆる「すいとん」のようなもので、小麦粉を練った生地を、薄くのばして、ひっぱりながらちぎり、茹でたり煮込んだりして食べるという。ちなみにひっつみの名は、手で引きちぎる行為に由来すると言われているそうだ。
地元の人によると、ひっつみは、家庭によってアレンジして食されるという。例えば、現代はカレーに入れたり、サバ缶を使って料理したりと、アレンジの種類はさまざま。地元民は、多彩に楽しんでいるらしい。
とはいえ、定番は、野菜の入ったダシ汁に入れる「ひっつみ汁」。ひっつみといえば、ひっつみ汁を指すことが一般的なのだそう。栄養満点で、身体も心も温まる一杯。寒い冬は、地元民の多くが食べたくなるという。ぜひ味わってみたい郷土料理だ。
昔ながらのひっつみを味わえる「SAN・SUN産直ひろば」。
三戸のひっつみを食べられる店は、町内に数カ所しかない。そのうち、国道沿いの道の駅に隣接して立つ「SAN・SUN産直ひろば」では、食堂で毎日、ひっつみを提供している。
食堂を担当するのは、町内の女性団体など7グループ。日によって担当するグループが変わるため、味は少し異なるそうだが、どれも昔ながらの味わいだという。取材日の担当は「貝守やまゆり会」。貝守地区内60数戸の女性が参加し、先達の暮らしの知恵を受け継ぎ、郷土の味を伝承する活動を続けている会だ。
この日店に立っていた会のお母さんによると、ひっつみのレシピは、提供することになった20年ほど前に、メンバーで話し合って考えたそう。早朝に作り寝かせておいた生地をひっぱりながらちぎり、茹でる。昆布、煮干し、かつお節、シイタケでとったダシを調味したつゆに、ゴボウ、ダイコン、ニンジン、シイタケなどの具材を加えてひと煮立ちさせ、茹でておいたひっつみを入れ、さらに煮る。ひっつみを別で茹でておくのが、貝守やまゆり会流。「野菜と一緒に煮込むのを好む人もいるけどね、別で茹でると、すごくツルんとするんですよ」と、お母さんが教えてくれた。
温かい出来立てのひっつみを味わう。なるほど、ツルんとなめらかな舌触りがおもしろい。野菜がたっぷりと入ったつゆの味は優しく、身体中に染み渡った。
この土地自慢の産物を、たっぷりと楽しむ。
食堂では、ひっつみのほか、昔からおやつとして食べられてきた串もちが人気だ。また、販売スペースでは、貝守やまゆり会など生産者が作るせんべいおこわ、酒まんじゅう、きんかもちなど、この地域の郷土の味が並ぶ。そして、新鮮な旬の地場野菜も。三戸をまるごと味わえる産直は、三戸を訪れたら、ぜひ立ち寄りたい。
貝守やまゆり会が販売するパック入りひっつみは、地元客が買いにくるほか、県外からの電話注文も多いという。「冷凍しておくともつから。20パック買う人とか、いますよ」と、お母さん。郷土の味を懐かしむ、地元出身者が買うのだろうか。
遠くのお客からも、喜ばれる。ひっつみもこの産直も、町の宝だ。
ひっつみを提供しているお店の情報はこちら
●SAN・SUN産直ひろば http://sansun.hi-net.ne.jp
●道の駅 さんのへ http://www.michinoeki-sannohe.com
[大人のための北東北エリアマガジン rakra ラ・クラ ライター 井藤 雪香]
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