絶品の万能調味料「かぜ水」

2019/08/23 - ファンクラブ通信

作り方の秘密を探りに

さまざまな料理に合う万能調味料の「かぜ水」。「かぜ」とは、青森県階上町や周辺地域の方言でウニのことだ。かぜ水は一体、ウニからどのように作られているのだろうか。その秘密を探るため、ウニ漁の最盛期の8月上旬、同町の大蛇漁港を訪ねた。

ウニのうま味凝縮、貴重なエキス

大蛇漁港の作業場では、階上漁協女性部に所属する荒谷恵子さん(71)が「塩ウニ」を作っていた。塩ウニは、殻をむいた生ウニに塩を振りかけて一定時間置き、水分を抜いた状態のもの。生ウニに比べて冷蔵で日持ちし、冷凍もできる。この瓶詰めは年間を通じて販売されている。

荒谷さんはこの日の午前中、水揚げされたウニの殻をむいて内臓などのわたを丁寧に取り、容器に入れてからたくさんの塩を振りかけていた。午後になって容器の中を見てみると、濃いオレンジ色の液体にむき身が沈んでいた。ウニから染み出たこの水分が、「かぜ水」だ。

続いて、荒谷さんは目の粗いざるを持ってきて、ゆっくりと容器の中身を流し入れた。ざるの下に置いたボールの中には、ドロドロとしたウニのエキスが滴っていった。ざるの隙間からは、身がぽとりぽとりと漏れ出るように落ちた。

「かぜ水はたくさんのウニから、たった少ししか取れないから貴重なんです」と荒谷さん。うま味が凝縮されたような、濃厚な色合いが印象的だった。

副産物が人気商品に

ウニ漁が盛んな青森県の太平洋沿岸の地域では、古くから塩ウニ作りが行われ、その副産物のかぜ水が家庭料理で使われてきた。塩やしょうゆ、だし汁などの代わりになる万能調味料として親しまれてきたのだ。

ただ、あくまでも商品価値のある塩ウニ作りの「ついで」に生まれる物であって、それ自体が主役ではなかった。各家庭で使う分だけ取っておき、余ったら捨ててさえいた。

階上町で、荒谷さんがかぜ水を商品として販売し始めたのは2015年の夏。前年に青森県職員が、地元の知られざるおいしい食材を取材に訪れたことがきっかけだった。

町内の飲食店で提供されたかぜ水は、県職員に「おいしい!」と大好評。取材に対応した町の担当者が、その様子を見て「これは商品になるのでは」と感じ、荒谷さんに販売を提案した。

荒谷さんは当初、「家で食べるものだし、こんなものが売れるわけないよ」と消極的な姿勢だった。それでも、担当者から説得されるままにラベルを作り、瓶に詰めて商品にしたところ、うわさを聞きつけた町内外の人からの注文が相次いだ。以来、荒谷さんは毎年の塩ウニ作りと合わせて一定数を瓶詰めし、販売している。

まろやかな味わい

使い方は簡単だ。味付けの調味料として、調理時に少し加えるだけ。荒谷さんによると、味が濃いので「少しずつ」がポイントだという。

野菜の煮付けやおひたし、卵焼きなどに使うのが一般的。調理後の仕上げに掛けるのもおすすめだ。ウニの香りが感じられ、まろやかさも加わって、絶品の味わいになる。パスタのソースに混ぜるのもいい。冷蔵で1週間ほど、冷凍で半年ほど日持ちする。

2018年5月にオープンした「はしかみハマの駅あるでぃ~ば」で、夏場を中心に随時販売されている。

(※本文中の年齢は取材時点)

[デーリー東北新聞社報道部 田中周菜]

 

 

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