250年の時を超え、進化を続ける「陸奥八仙」
八戸を代表する地酒の一つである「陸奥八仙」。そのラインナップはとても豊富で、特別純米、ISARIBI、ピンクラベルなど定番酒のほか、季節限定酒も人気を集めています。無濾過や生原酒など、その季節ごとのフレッシュな味わいや香りが楽しめます。
八戸圏域の魅力が一堂に会するアンテナショップ「8base(エイトベース)」でも安定した人気を誇っており、この8~9月には季節限定酒の「緑ラベル特別純米」「オレンジラベル純米吟醸ひやおろし」が発売されています。そんな人気銘柄「陸奥八仙」の魅力に迫るべく、今回は醸造元である八戸酒造株式会社にお話を伺ってきました。
「陸奥男山」と「陸奥八仙」を生んだ蔵
八戸酒造は安永4年(1775年)の創業以来、代々酒造りを続けてきた老舗の蔵です。現在は八代目社長の駒井庄三郎さんを中心に、長男の駒井秀介(ひでゆき)さんと次男の駒井伸介(のぶゆき)さんが経営と酒造りを支えています。代表銘柄は創業ブランドである「陸奥男山」、そして今回紹介する「陸奥八仙」。使用する米は全て青森県産米、水はミネラル豊富な蟹沢の名水を使用するなど、青森の地酒として青森県産の素材にこだわっています。
夏の「緑ラベル」、秋の「オレンジラベル」
「陸奥八仙 緑ラベル特別純米(1,800ml・3,520円/720ml・1,980円)」、「陸奥八仙 オレンジラベル純米吟醸 ひやおろし(1,800ml・3,960円/720ml・2,200円)」がこれからの季節に楽しめる季節限定酒になります。「緑ラベル」は一度火入れを加えた後に、貯蔵庫で夏の間寝かせてあるため、程よく熟成が行われています。「オレンジラベル」は香り穏やかでキリッとシャープな印象の一杯。最初は冷酒でキュッといった後は、燗にして旬の食材と一緒に楽しんでみてはどうでしょう。
時代に合ったキレイでクリアな、雑味のない味わいを
「陸奥八仙は甘口や辛口、フルーティーなものなど様々なラインナップを揃えているので、ぜひ好みの1本を見つけてほしいです」と語るのは、八戸酒造株式会社の常務で製造責任者を務める伸介さん。大学卒業後、大手食品メーカーで営業職をしていましたが、当時、八戸酒造は人手不足に加え売上も伸び悩んでいた時期でした。父である庄三郎さんから「戻ってきて一緒にやってほしい」との声に応え、26歳のときにUターンをしました。「次男なので必要がなければ戻るつもりはなかったのですが、自分の代で家業を潰したくないと思いました」と、当時を振り返る伸介さん。南部杜氏の下で酒造りを一から学び、2013年から杜氏として製造の責任者を務めています。
「お酒はちょっとしたことで味が変わります。しぼりたてはいいけれど後から飲むと味が崩れてくるとか、火入れのタイミングひとつでも変わりますね。そういう部分を一つずつ試行錯誤をしながら酒質設計を見直していきました」と伸介さん。杜氏と蔵人たちが真摯に向き合ってきた研鑽の日々と、お兄さんで専務の秀介さんのリブランディング戦略への取り組みが功を奏し、陸奥八仙の酒質は飛躍的に向上。2021年には国内外で開催されたコンテストで最も評価された酒蔵を認定する「世界酒蔵ランキング」の第1位に輝くなど、国内外で評価も高まっていきました。
日本酒造りの技術を応用した新たな挑戦
八戸酒造では、より多くの方に日本酒を好きになっていただきたいという思いから、その入口になるようなお酒の開発にも精力的に取り組んでいます。
そんな商品の一つが「8000 BREWING ジューシー HOP CIDER(500ml・1,980円)」。日本酒造りの技術を応用して米・米麹に加えて、田子町産のホップとJAアオレンのリンゴ果汁を使用したビールテイストのお酒です。「私はビールも好きなんです。いずれはビールテイストのお酒が作りたいなと考えていました。いま国内でもクラフトビールが増えていますが、原材料はほとんどが外国産です。うちで作るなら、なるべく青森のものを使いたいなと考えていました」。
また、JAアオレンと共同開発した青森の果汁を贅沢に使用した「AOMORI JUICY LAB(500ml・1,980円)」は芳醇な香りと甘みが特徴の「王林」を中心にブレンドしたスパークリングタイプのお酒。アルコール度数が3%と低めなため、お酒が苦手という方にも飲みやすい商品になっています。
最後に今後作ってみたいお酒はと聞くと「種類を問わず美味しいお酒を造っていきたいですね」と伸介さん。これまで培った日本酒造りの技術を応用して、チャレンジを続ける八戸酒造の進化から目が離せません。
※今回紹介した「陸奥八仙」が買える店は八戸酒造HPを参照ください。
※陸奥八仙は八戸市のふるさと納税の返礼品にもなっています。
■八戸酒造株式会社
■八戸酒造オンラインショップ
(フリーライター 門脇寿英)