移住者のライフスタイル山本 耕一郎さん(八戸市 平成24年 Iターン)


山本耕一郎(やまもと・こういちろう)
昭和44年、愛知県名古屋市生まれ。筑波大学卒。英国ロイヤルカレッジオブアート大学院修了。帰国後はアートプロジェクトを中心に活動し、「アサヒアートフェスティバル」「トヨタ子どもとアーティストの出会い」などに参加。平成24年、八戸市南郷島守へⅠターン。アーティスト。市民団体「まちぐみ」組長。

奥ゆかしくも温かい八戸人は国宝?

 アーティスト、山本耕一郎さんが八戸を初めて訪れたのは平成22年夏。八戸ポータルミュージアム「はっち」開館記念事業として、中心商店街でプロジェクトを手がけるためでした。
 「北海道から九州までいろんなところでやりましたが、こんなに温かく迎えてくれるまちはなかったですね。子どももお年寄りも、みんな優しくて奥ゆかしくて、温かい。都会化が進むほど訛りが消えて、人間もフラット化されていくけど、八戸にはまだ独特の気風みたいなものが残ってる。ほかにはいない種類の人に会えるんです。地元の人はあまり意識してないけど、僕、八戸人は国宝だって言ってるんだ(笑)」。
 好きが高じて24年12月、ついに移住。 「近所の方にしてみれば家に作品も置いてないし、『あいつはいつ絵を描き始めるんだ?』って感じだったでしょうね」と笑いますが、山本さんが行っているのはまちと人をつなぐ「コミュニティアート」。一言でいえば、アートを通じたまちづくりで、商店街の店舗を取材し、お店や店主にまつわる話を吹き出し型のプレートにして店先に貼り出す「ニッポンのうわさ」シリーズをはじめ、全国で活動を展開しています。

目に見えるかたちでまちを変えていく


 移住後の拠点は、アトリエ兼住居「山本さんち」。一面、田んぼとそばやブルーベリーの畑が広がる南郷地区島守盆地にあります。移住の際、約半年かけて空き家をリノベーションしていく過程で「床はがし大会」や「壁塗り大会」を開き、インターネットで情報発信することで、八戸市外からも様々な人が訪れました。一昨年からはリビングを開放し、月替わりで多彩な人々が〝マスター〞を務める「barスマモリ」を毎月一度開店。山本さんにかかれば、周囲のあらゆるモノ・コトが、地域と人、人と人をつなぐプロジェクトになってしまいます。
 そして26年には、八戸市中心街活性化に取り組む市民団体「まちぐみ」を立ち上げました。店舗外観のリニューアルや特産品の新パッケージデザイン、ユニークな「入りづらい店マッププロジェクト」や飲食店の壁画制作など、その活動は多彩で、八戸をおもしろくするアイデアを一つひとつ実現しています。活動開始から「2年半で、組員は380人を超えました」。
 「まちを少しずつ、〝目に見えるかたちで〞変えていくことをやっています。そして『あそこのペンキは僕が塗ったんだ』とか『あれは私のアイデアでできたのよ』とか、実際に作業に参加してもらってかたちに残すことで、誰かに誇りたくなったり、まちをもっと好きになるきっかけになればいいですね」。
 27年7月には空き店舗をリノベーションした新拠点「まちぐみラボ」をオープン。近所の小学生が放課後、宿題をしに来たり、お年寄りや主婦が井戸端会議を開いたりと、まちなかの拠り所として定着しつつあります。

移住者のライフスタイル

 移住先は「ほどよい田舎」が人気です。
 生活するうえで必要な都市機能を備えながらも身近に美しい自然が広がり、人と人の支え合いが根付く暮らし。そんな便利さと暮らしやすさを兼ね備えた生活空間がここにはあります。
 物質的な豊かさは都会ほどではないかもしれません。
 でも、心にゆとりを与えてくれる人との絆がここにはあります。人との絆を、個人の制約ではなく個人の楽しみに変えることができる人に、この地で半都半邑の楽しさを味わってほしいのです。