移住者のライフスタイル渡邊 嗣朗さん (南部町 令和5年 Iターン)


渡邊 嗣朗(わたなべ・しろう)
1967年、静岡県生まれ。埼玉県川越市育ち。筑波大学第二学群(現人文・文化学群)日本語・日本文化学類卒業後、 1993年より本格的に日本語教育に携わる。都内の語学・ビジネス専門学校のほか米国イリノイ州、中国遼寧省・吉林省の高校・専門学校・研修施設等で教壇に立つ。2023年5月、地域おこし協力隊員として南部町に移住。同町役場・交流推進課に所属し日本語教育や国際交流イベントの企画・運営などを行う。

日本語教育の地域差を解消したい ベテラン日本語教師の挑戦

 日本語教師として、国内外で30年以上教鞭を執ってきた渡邊嗣朗さん。地域おこし協力隊員として南部町に移住したきっかけは、指導現場で感じた”地域差”です。
 「説明会一つ取っても開催は都内が多い。地方の方は長い移動時間をかけて出席しなくてはならないし、『どうにかならないか』との問い合わせもよくいただきました」
 異文化交流や日本理解の発展のため、学習機会の裾野を広げる必要性を痛感した渡邊さんは、尽力できる機会を模索。南部町の募集を目にしてすぐに応募します。それまで東北地方には縁もゆかりも無かったものの、自らの気持ちと募集のタイミングの一致に運命的なものを感じ、スムーズに移住を決めました。
 現在の仕事は、八戸圏域に住む外国籍住民のための日本語教室開催・運営や、国際交流イベントの企画・実施。時には生活のアドバイスも行います。技能実習生や留学生向けに行う週に10クラスの授業では、一人一人の語学レベルや生活事情を考慮するとともに、生徒の発言やクラスメイトのコミュニケーションを引き出す進め方を意識。イベントでは南部町特産のさくらんぼ狩りや畳工場の見学を企画し、地域住民と一緒に盛り上がりました。
 「外国籍の方の南部町での生活が楽しく、安心できるものになるよう支えることが使命。日本人の方にとっても、彼らとの交流が世界へ通じる新しい扉になったらと願っています」
 在任中に活動の基盤を整え、次世代へバトンタッチしたいと考えていると言います。「ゆくゆくは多文化共生や地域日本語教室のモデルケースとして南部町が全国に知られ、その評判を聞いた人が世界中から集まってくるのが理想」と展望を語ってくれました。

大人世代の移住は、準備・相談とフットワークの軽さが大切

 「今は交通網やオンライン環境が発達し、社会的な理解も進んで、以前より移住が手軽になったのではないでしょうか。私自身、移住の前と後で入手できる情報量は変わりません」と渡邊さん。東京の勉強会や青森県内各所の日本語・国際交流の集まりに精力的に参加し、ネットワークを広げています。
 ミドルエイジ以降の移住については「入念な下調べや準備は不可欠ですが、心と体のフットワークを軽くしておくことも大切。気持ちとタイミングが合ったなら、ご緑を信じて飛び込んでみてもいいのでは?」とアドバイス。自身が役場担当者とのオンライン面談で疑問や不安を解消してから移住した経験から、「『お試し住宅』や相談会なども用意されていますし、住環境では雪も意外と少なく、交通の便も整っています。まずは気軽に相談してみて」と呼びかけます。

移住者のライフスタイル

 移住先は「ほどよい田舎」が人気です。
 生活するうえで必要な都市機能を備えながらも身近に美しい自然が広がり、人と人の支え合いが根付く暮らし。そんな便利さと暮らしやすさを兼ね備えた生活空間がここにはあります。
 物質的な豊かさは都会ほどではないかもしれません。
 でも、心にゆとりを与えてくれる人との絆がここにはあります。人との絆を、個人の制約ではなく個人の楽しみに変えることができる人に、この地で半都半邑の楽しさを味わってほしいのです。