移住者のライフスタイル阪井 博満さん、春奈さん (五戸町 令和2年 U・Jターン)


阪井 博満・春奈(さかい・ひろみつ、はるな)
<博満さん>1988年、山梨県中央市生まれ/ <春奈さん>1990年、青森県南部町生まれ。美容師をしていた博満さんと大学生だった春奈さんが栃木県で出会い、約2年の還距離恋愛を経て2014年に結婚。2017年には長女が誕生。2020年、春奈さんの母の故郷である五戸町に移住。2021年、博満さんがレザーブランド「Nleather(エヌレザー)」立ち上げ。家族は夫婦、子ども3人。

祖父が建てた家に”孫Jターン” 祖母の遺した道具で起業

 山間の集落に建つ阪井博満さん、春奈さん家族の住まいは、まるで”夏休みに遊びに来たおばあちゃんの家”。どこか懐かしい日本家屋です。広い廊下の突き当たり、客間をリフォームした空間が博満さんのアトリエ。レザーブランド『Nleather(エヌレザー)』を運営しています。ブランド名は子どもたちのイニシャルから。ハンドメイドの作品も「子どもみたいなものだから」と博満さんが名付けました。
 二人が出会ったのは栃木県。大学生の春奈さんと美容師だった博満さんは、春奈さんが八戸市で就職、博満さんが地元に戻る選択をした後も、遠距離に負けず絆を深めます。2年後に春奈さんが山梨県に嫁ぎ、翌年、長女が誕生。次女の出産を控え、新居を検討したことが移住のきっかけです。
 「山梨で探してもピンとこなくて。母に相談したら、祖父が建てて母が生まれ育ったこの家を勧められました。祖父亡き後に親戚がしばらく住み、空き家になったのを母が買い取っていたんです」両親は南部町住まい。五戸町で独り暮らす祖母への思いが春奈さんの背中を押しました。博満さんも快諾し2020年春、新生活を開始。
 しかし、思わぬ障壁が立ちはだかります。「集落の皆さんの言葉が一言も分からなかった」と博満さんは当時を振り返り苦笑。幼い頃からもの作りが得意。祖母が遺した道具でレザークラフトを続けていたことから、革製品のネット販売を始めました。
 「レザーの仕事に憧れながら実現できずにいたのですが、せっかく移住したのだからやりたいことやろう!と決めました」
 春奈さんは実家の農業を手伝いつつ、二人三脚で作品を世に送り出してきました。

四季折々の自然が遊び場 地域に見守られながら子育て

 「走り回る子どもを叱らなくていいのが嬉しいですね。ここなら大らかに子育てができます」と春奈さん。広々とした家も庭も格好の遊び場。四季折々に変化する自然も、子どもたちは遊び道具に変えて楽しみます。アトリエには、パパのそばでお絵かきや工作するのが好きな子どもたちの作品がいっぱい。
 「いつか地域の子どもたちにもの作りの楽しさを伝えられたら」と、夫婦には新たな夢もできました。年末年始や誕生日は馬刺しでお祝いするなど、地域の食文化も家族で満喫中です。
 長女がコミュニティバスで通う小学校は少人数な分、全校生徒が仲良し。地域住民が料理や昔の遊びを教える放課後のサークル活動もあり、「地域全体で子育てをしている感じ。心強いですね」と夫妻は微笑みを交わします。

移住者のライフスタイル

 移住先は「ほどよい田舎」が人気です。
 生活するうえで必要な都市機能を備えながらも身近に美しい自然が広がり、人と人の支え合いが根付く暮らし。そんな便利さと暮らしやすさを兼ね備えた生活空間がここにはあります。
 物質的な豊かさは都会ほどではないかもしれません。
 でも、心にゆとりを与えてくれる人との絆がここにはあります。人との絆を、個人の制約ではなく個人の楽しみに変えることができる人に、この地で半都半邑の楽しさを味わってほしいのです。