移住者のライフスタイル西村 裕子さん (階上町 平成29年 Jターン)


西村 裕子(にしむら・ゆうこ)
1981年生まれ。宮城県七ヶ浜町出身。高校卒業後に専門学校でCG技術を学び、19歳から35歳まで都内でデジタル製版会社、製薬会社に勤務。2016年、夫の実家のある階上町にJターン。現在は地元企業で広報を担当するほかフリーデザイナー、WEB上で展開する階上町PRキャラキター『はしかみどんこちゃん』としても活動。家族は夫、子ども1人、猫3匹、ニワトリ5羽。日本グラフィックデザイン協会(JAGDA)正会員。

スローじゃない田舎暮らしは楽し ”大人の自由研究“に勤しむ

 結婚前から遊びに来ていた夫の地元・階上町の豊かな自然に惚れ込み、「我慢できなくなって」東京から移住し8年目。夫の両親が住んでいた空き家をリフォームし、広い庭に作った畑では玉ねぎ・にんにく・さつまいも・アスパラガスなど多品種の野菜を育てて楽しんでいます。
 西村裕子さんの1日は夏場、早朝5時半から始まります。起き抜けにSNSをチェックしたら朝食の支度にかかり、食事が済むと畑の作物に水やり。飼っている鶏の餌やりをする代わりに卵をいただき、家に入ると身支度をして八戸市内の会社に出勤。広報担当者としてフルタイムで印刷物デザインなどの業務をこなすと、帰宅後は夕食用の野菜を畑から収穫。にんじんの皮などを鶏の餌用に取り分けた後、家族で食卓を囲みます。時には道の駅で買ってきた有精卵を鶏に温めさせてヒナを孵し、夫婦で庭に仕事用のサブハウスを建て…。
 「やりたいことがありすぎて、全然スローじゃない田舎募らしです(笑)。土地代が安いし地元の人はおおらかで、大人になっても”夏休みの自由研究“をしたい人、暮らし自体を楽しみたい人には最高の場所」生き生きと話す姿から充実感が滲みます。

生活の中で生まれるアイデアを『どんこちゃん』に託して

 会社勤めのかたわら、西村さんは移住当初からウェブ上で『はしかみどんこちゃん』のハンドルネームで活動しています。SNSに始まり、地元紙にエッセイを連載、動画にも進出し、『どんこちゃん』は今や階上町のキャラクターとして知名度上昇中です。『階上町ポータル』と銘打ったサイトでは、イベントやグルメ、遊び場など町の観光情報を中心に発信。コロナ禍には地域の飲食店のテイクアウトメニューを検索できるようにまとめ、地域のネットユーザーに喜ばれました。他にもデザイナーとしてのスキルを活かし、縄文土器や階上岳、ご当地グルメをモチーフにしたオリジナルTシャツやトートバッグ、マスキングテープをデザイン・販売。ブログ記事をまとめたマガジンも発行するなど、縦横無尽に活躍しています。
 とはいえ、「町を盛り上げようとか特に考えていなくて、作ることもこの町も好きだからやっているだけ。暮らしを楽しむ中でアイデアが湧いたら形にしないと気が済まない」と西村さんはどこまでも自然体。目標は「定年を迎える20年後までに家や庭を自分たち好みに改造しておきたくて。畑もあと20回しか試せないし、忙しい!」と笑います。遊び心を忘れず手間暇を楽しむ姿勢こそが、移住成功の秘訣かもしれません。

移住者のライフスタイル

 移住先は「ほどよい田舎」が人気です。
 生活するうえで必要な都市機能を備えながらも身近に美しい自然が広がり、人と人の支え合いが根付く暮らし。そんな便利さと暮らしやすさを兼ね備えた生活空間がここにはあります。
 物質的な豊かさは都会ほどではないかもしれません。
 でも、心にゆとりを与えてくれる人との絆がここにはあります。人との絆を、個人の制約ではなく個人の楽しみに変えることができる人に、この地で半都半邑の楽しさを味わってほしいのです。