移住者のライフスタイル中平 将義さん (新郷村 平成21年 Uターン)


中平 将義(なかだい・まさよし)
1982年生まれ。三本木農業高校卒業後、ロックミュージシャンを目指して上京するも、クラブミュージックに目覚めDJ活動をスタート。CM音楽制作やイベント主催を手がける。Uターン後も青森県内のクラブなどを舞台に活動を継続。2017年、同級生らとともに新郷村初の音楽イベント「村魂祭(そんこんさい)」を開催。

DJ農家、我が道を行く。8時〜17時が”定時”

 水田とにんにく畑を合わせて東京ドーム1個以上の農地。両親と妻がいるとはいえ、作業が大変なのでは? と思いきや、「全然。農家は拘束時間が長いイメージがあるけど、僕はふつうに8時〜17時で帰ります」
 中平将義さんは新郷村で生まれ育ち、高校卒業後に上京。都内を中心にDJとして活躍していました。家庭の事情でUターンし就農後は、重労働の草刈りを最低限に抑え、販売ルートも独自に開拓するなど、独自で効率的な方法を実践。
 「色々言われますよ。一般的な農家の1/3くらいしか働いてないから。でも僕は早く帰って息子とサッカーしたい (笑)」と、我が道を貫いています。
 〝我が道〞といえば、中平さんはほとんどSNSを使いません。以前はSNSをフル活用し人脈を築いていましたが、Uターン以降「オフラインパワーのすごさを実感した」のが、SNSを離れた理由です。

「どこに住むかより誰といるか」ディープな村民が魅力の新郷

 友だちの友だちは友だち。そんな”オフライン”つながりから始まったイベントが、今や村の名物です。2017年から開催中の音楽フェス『村魂祭(そんこんさい)』。会場の『間木の平グリーンパーク』はもともとキャンプ場で、場内どこでもテント設営OK。ロック・民族音楽・朗読まで多彩なパフォーマンスをゆっくり楽しめるほか、飲食ブースでは「極甘」と評判のとうもろこし『郷のきみ』など、村の特産品も味わえます。
 同フェスは看板作りから出演者の選定、駐車場の交通整理まで中平さんと仲間の手作り。特産品販売に携わる友人、カフェ経営の同級生、その知人のりんご農家…と次々に縁がつながり、開催が実現しました。初年度200人だった来場者は翌年、500人に。地域振興に貢献している同フェスですが、中平さんは「地域のため? 考えてないです(笑)。自分たちで楽しんでたら、人は勝手に集まって来ると思ってるので」
 10月末〜4月までは農家の仕事は完全オフ。フェスを終えると旅行に行き、八戸市内でDJをして過ごすという中平さん。友人と家族ぐるみでキャンプやバーベキューをし、農村ならではの”リア充”ライフを満喫しています。しかしそれは、あくまでもUターンだからでは?
 そんな疑問をぶつけると、「どこに住むにしても変わらないんじゃないかな。どこに住むかより、誰といるかが大事なんであって。肌に合う人を見つけるには自分から一歩踏み出さないと。ただ1つ言えるのは、新郷村は面白いヤツがめっちゃ多い!」
 『キリストの墓』に『ピラミッド』。新郷村の村民性は、村の名所のインパクトに劣らずディープなようです。

移住者のライフスタイル

 移住先は「ほどよい田舎」が人気です。
 生活するうえで必要な都市機能を備えながらも身近に美しい自然が広がり、人と人の支え合いが根付く暮らし。そんな便利さと暮らしやすさを兼ね備えた生活空間がここにはあります。
 物質的な豊かさは都会ほどではないかもしれません。
 でも、心にゆとりを与えてくれる人との絆がここにはあります。人との絆を、個人の制約ではなく個人の楽しみに変えることができる人に、この地で半都半邑の楽しさを味わってほしいのです。