移住者のライフスタイル坂上 祐紀さん (田子町 平成27年 Uターン)


坂上 祐紀(さかうえ・ゆうき)
1988年、田子町生まれ。青森県立田子高校卒業後、上京。都内の焼肉店やカフェに勤務し、イタリアンをベースにした無国籍料理の調理経験を積む。 2014年に自動車免許取得目的で帰省中、友人に誘われて居酒屋経営に参画することとなり同年Uターン。またしても友人の誘いで(有)沢田ファーム(沢田稔社長)にも就職しWワークで働く。2023年4月、田子町中心部に『路地裏バルよだか』をオープン。

田子じゃないみたい!? Uターン後、若者が集まれる居酒屋をオープン

 田子町のランドマーク『田子町ガーリックセンター』から徒歩3分。同町中心部にある『路地裏バルよだか』のコンセプトは「田子じゃないみたいな店」と、オーナーシェフの坂上祐紀さんは笑います。カウンターとテーブル席に、「お喋りを楽しんでほしいから」カラオケは無し。音楽やファッションのポップなポスターが、多国籍な雰囲気を醸し出します。同町特産のにんにくを始め、地元産の季節の食材を使った料理が好評。一番人気の「南部せんべいのナチョス」はメキシコ料理をアレンジし、トルティーヤチップスの代わりに南部せんべいを使用しています。
 2023年4月のオープンから、地域の若者を中心に観光客に愛される店として定着。週末のみ営業の予定が、ランチやコースメニューも含めた平日の予約も増加中です。
 「店というより”料理好きな友達の家で宅飲み”くらいの感覚で楽しんでいただけたら」
 東京・高円寺のカフェで調理経験を積んだ坂上さんが同町に帰郷したのは26歳の頃。友人が開いた居酒屋を手伝いながら、先輩の誘いでニンニク栽培と加工販売をしている(有)沢田ファームにも勤務。Wワークの日々は忙しくも充実していました。
 しかしコロナ禍が転機に。勤務先の居酒屋が閉店し、町全体の飲食店数も減少。活気が失われていく地元をなんとかしなければと決断したのは、若者の居場所になる飲食店を開くことでした。母・一子さんがかつて中心街で営んでいた美容室の物件をそのまま借り、父・雅則さんと半年かけて改装。開業後、板前修業経験を持つ後輩・関本隆泰さんも店の運営に携わることになりました。

会社の兼業OKに感謝 故郷の若い世代に背中を見せたい

 実は20歳の頃から飲食店経営を夢見てきた坂上さん。夢をかなえた今、思います。
 「今のライフスタイルは体力的にはハードですが、農業も料理も接客も好きなことだから楽しい。店だけで食べていくのが簡単じゃないのは分かっていたから、兼業を認めてくれた会社に感謝していますし、僕みたいに仕事しながらやりたいことをやるのもいいよって伝えたい。『あいつでもできるんなら俺も!』って、若い子に思ってほしいんです」
 同店の看板には店名のそばに “for country fellows” = ”田舎の仲間のために” の文字。移住を考えている人へ、坂上さんは次のようにメッセージを送ります。
 「田子町はにんにくを通じて昔から国際的な交流があり、メディア取材も多いのでオープンな人が多い気がします。そして田子に興味を持ってくださった方、ぜひ当店へ。優しい店主と田舎の仲間がお待ちしています」

移住者のライフスタイル

 移住先は「ほどよい田舎」が人気です。
 生活するうえで必要な都市機能を備えながらも身近に美しい自然が広がり、人と人の支え合いが根付く暮らし。そんな便利さと暮らしやすさを兼ね備えた生活空間がここにはあります。
 物質的な豊かさは都会ほどではないかもしれません。
 でも、心にゆとりを与えてくれる人との絆がここにはあります。人との絆を、個人の制約ではなく個人の楽しみに変えることができる人に、この地で半都半邑の楽しさを味わってほしいのです。